ありがたいことをしてもらったとき、思わず「すみません」と言っていないだろうか。
そんなときは、「ありがとう」と素直に口に出して言おう。
すると自分が幸せになるだけでなく、周りも笑顔にすることができる。
祖母と電車に乗っていたときのこと。
一人の女性が席を立ち「どうぞ」と言ってくれた。
祖母は「あら、ありがとう」と笑顔でお礼をいい、座らせてもらった。
譲っていただいた方も笑顔になっていた。
「ありがとう」という言葉の魔法。
この魔法が自然と出てくる祖母だから、席を譲ってもらえるのかな…。
私はどうも照れくさくて、「すみません」という便利な表現を使ってしまうことが多いのだが、これをきっかけに、「ありがとう」と言おうと心がけている。
会計士は会計監査という仕事を、直接クライアントにお邪魔して行うことが多い。
私が担当したクライアントは、会社名こそ知っていたが、最初は仕組みも何も知らない業界であった。
上場企業として存在するために必要だから、仕方なく会計監査を受ける、という発想ではなく、会計監査を受け、私たちとの真剣勝負をすることで、世界に通じる企業を目指していた。
だからこそ、こちらも必死。
飛び交う専門用語についてコソ勉をした。
納得するまで膝を突き合わせて議論した。
時には経理部長とぶつかり、鬼の形相も見た。
何年か経ち、私が、このクライアントの会計監査から離れる日、経理部長から言葉をいただいた。
「あなたに監査をしていただいていたから、安心して公表することができました。ありがとうございました」
私にとっても、この企業の成長をみることは、とてもうれしく、幸せな時間だった。
それにしても、あの強面の(すみません!)経理部長が、魔法使いだったとは。